店長ブログ (100件)
『マスクの行方』
NEW 2025年08月13日(水)16時

午前10時過ぎ。
事務所の窓から差し込む光が、カウンターの木目をやわらかく照らしている。
ゆる助はパソコンで前日の記録を整理していた。キーボードをゆっくり、確実に打つのが彼の流儀だ。
「今日も穏やかですね」なんて心の中でつぶやきながらコーヒーを一口。
そのとき、ふと視界の端に白いものが映った。机の上に、ぽつんと置かれたマスク。
(誰の忘れ物だろう…)
念のため、すぐ近くの待機所に顔を出す。
「すみません、このマスク…どなたかのですか?」
すると奥の席にいた女の子が手を上げ、「あ、それ、私の…あれ?」と不思議そうに近づいてきた。
「でも…これ、ゆる助さんのじゃないですか?」
「え?」
一瞬何を言われているのかわからず、耳を触ってみる。――何もつけていない。
そういえばさっきコーヒーを飲むとき、外して机に置いた…それっきり忘れていたらしい。
「危ないですよ〜、誰かが持ってっちゃったら」
「いやぁ…“落とし物センター”が設立されるところでしたね」
控えめに笑いをとろうとするゆる助だが、耳はほんのり赤くなっている。
女の子は笑いながらマスクを彼に返し、事務所は一瞬だけ、いつもより温かい空気に包まれた。
そしてゆる助は、机に座り直し、今度はマスクを外したら絶対すぐ耳に戻そうと心に決めた――その10分後、コーヒーのおかわりを淹れに行く彼の机の上には、また同じ白いマスクがぽつんと置かれていた。
事務所の窓から差し込む光が、カウンターの木目をやわらかく照らしている。
ゆる助はパソコンで前日の記録を整理していた。キーボードをゆっくり、確実に打つのが彼の流儀だ。
「今日も穏やかですね」なんて心の中でつぶやきながらコーヒーを一口。
そのとき、ふと視界の端に白いものが映った。机の上に、ぽつんと置かれたマスク。
(誰の忘れ物だろう…)
念のため、すぐ近くの待機所に顔を出す。
「すみません、このマスク…どなたかのですか?」
すると奥の席にいた女の子が手を上げ、「あ、それ、私の…あれ?」と不思議そうに近づいてきた。
「でも…これ、ゆる助さんのじゃないですか?」
「え?」
一瞬何を言われているのかわからず、耳を触ってみる。――何もつけていない。
そういえばさっきコーヒーを飲むとき、外して机に置いた…それっきり忘れていたらしい。
「危ないですよ〜、誰かが持ってっちゃったら」
「いやぁ…“落とし物センター”が設立されるところでしたね」
控えめに笑いをとろうとするゆる助だが、耳はほんのり赤くなっている。
女の子は笑いながらマスクを彼に返し、事務所は一瞬だけ、いつもより温かい空気に包まれた。
そしてゆる助は、机に座り直し、今度はマスクを外したら絶対すぐ耳に戻そうと心に決めた――その10分後、コーヒーのおかわりを淹れに行く彼の机の上には、また同じ白いマスクがぽつんと置かれていた。